ビー玉ウォーズ

こんにちは、しゃど地蔵です。

ビー玉で子どもたちと楽しく遊ぶボランティア活動をご紹介してきたこのシリーズ。
今回は、活動していた公園で、個人的な花壇を勝手に作っている(犯罪です)謎の老人とトラブルになったときの話です。
ボランティア活動の詳細について、詳しくは公園のカテゴリをご覧ください。

ちなみにこちらの活動ですが、コロナ禍が本格化し始めたのと僕が連載で忙しくなった2020年春にひっそりと終了しました。このお話は2018年~2019年の出来事です。

公園のヌシがあらわれた

さて、とある小さな公園で自然発生したビー玉カルチャーなのですが、実はこの公園には先住民とも言うべき「ヌシ」がおりました。

この老人は公園の一角にブロックを積んで「花壇」を作り、こどもが近づくと怒る。おまけに周囲にはアルミ製物干し竿をパイプカッターで切って針金で組んだベトコンのブービートラップみたいな手製の柵があって、それで子どもたちが何人も怪我をしていました。僕がビー玉遊びを初めたことで子どもが増えたら、お前のせいで子どもが花壇に近づくとかいって怒ってきたんですよね…それで、「なんかこの公園、やべえヌシみてえなのいるぞ…」って気が付きました。ヌシは、自分は大阪市に雇われた管理人だ、とか自称して色々命令するかのように言ってきてましたが、調べてみると嘘でした。。。

「公園愛護会会長」なる肩書をもつのは確かでしたが、それは自治体から補助金をもらって公園の清掃などを手伝うボランティア活動家という立場です。公園管理事務所がお金だけ出して長年放任してきたから、自分が一番偉いんだ、管理を任されているんだと変なふうに勘違いしちゃってたみたいですね。僕が関係法令を調べた限りでは、公園に勝手に花壇や農地を作る行為や、利用者に排除命令を出すっていうのは、当然ですが法律で禁止されており、ヌシの行動は違法行為であると言えました。まあ常識的に考えておかしいんですけど。

とりあえず…最初は機嫌をとってどうにかしておく方向で誤魔化してました。子どもたちにはヌシ花壇に近づかぬよう教育し、ヌシにもその事を説明して、共存を図りました。でもプレイヤーは増えていくし、そうなるとヌシもおこだからトラブルになるわけですよね。で、会話していると同じ話題がループしたり、上記のようにすぐバれる嘘を連続でついてきたりヌシの挙動はかなり怪しい。80代の人だったので、もしかしたらボケていたのかもしれないです。あるいは民度が低いだけかもしれないが…。とにかく僕はこんなややこしい人と深く関わる事が今までの人生で無かったので困惑しましたが、「はいそうですか」って何十人も子どもたちが楽しんでいる、当時全盛期だったビー玉活動を投げ出せるわけもなく…ズルズルと戦いに巻き込まれていったのでした。

僕がビー玉遊びを初めた2018年、夏が近づいてくると、ヌシは嫌がらせなのか、長年の習慣がエスカレートしたのか、公園で一日中草むしりをするようになりました。公園の端から端まで、大阪市が設置した植え込みのクマ笹にいたるまで全ての草っぽいものを引っこ抜き、砂漠のようにしてしまいます。それではビー玉を草むらに隠す「宝探し」ができないので、子どもたちも何十人と増えていたし、ワイワイ楽しそうにしてるのを見て知ってるわけですから、もしかして協力してもらえるかな?と思って、ダメ元で、わりと丁寧にお願いしてみたんですね。「子どもたちのためなので、草むしり、端っこのほうだけちょっと手加減してやってもらえませんか?」と…。しかしそれが逆鱗にふれたらしく、ヌシが自分の仲間に何か言ったようで、公園管理の迷惑だから活動をやめなさいと文句を言ってくる老人が何人も現れました。そして老人たちは、僕が隠したビー玉を拾ってゴミ箱に捨てる。正直何が起こっているのかわからなくて、驚きました。

地元町内会について

この老人たちの正体は、地元町内会の役員たちです。

ヌシは町内会の役員の一人です。町内会といっても、ここ、3~40年以内に引っ越してきた人はほとんど活動してなくて、町内会費だけ納める、という形骸化した組織です。80歳前後の老人グループが役員を独占(?)していて、一般住民は存在すら意識していません。

こちら、2018年の会計報告書の抜粋になりますが…

予算案のかなりの部分を占める金額の「老人福祉費」というのがあり、これはようするに、老人(役員)が旅行に行ったりする予算みたいですね…。そんな事に町内会費を使っているだなんて、一般住民への説明はない。
聞いたところによると、町内会費を納める事を拒否ったりすると、「命令じゃない」とか言いながら、「みんな入っている」などと村八分を示唆されて恐ろしい目にあうらしいです。てか僕がこんな目に遭ったのも、急にやり始めたわけじゃなくて、他の案件で慣れてたからでしょうね…。

うちの地元は大阪市内ですが、昔からある農村が昭和になってから宅地開発されて住宅街になって、今ではよくある現代のベッドタウンといった感じの街です。基本的に田舎っぽさは薄いんですが、どうやら4、50年以上前から住んでいる「役員」の間だけには、農村時代から続くムラ社会的なカルチャーが受け継がれてきていたようなのです。なんというか、嫌な意味で田舎。部外者に冷たく、閉鎖的で、自分たちの内輪の利益を最大化することを志向し、新しく引っ越してきた住民には役員の地位は与えない。一方で町内会の仕事という「労役」も免除されるわけですが、役員の人々は仕事をこなすことにエリート意識をもっており、貴族社会的な結束を持つ。「仲間」がピンチのときには意気揚々と侍のように駆け付け、下民を恫喝する。

ヌシは、その町内会の権力をバックにして自分の要求を通そうとしていたのですねぇ…恐ろしい話です。

レジスタンス活動をはじめる

まあこれしきのことで負けてはいられないということで、ぼくは、恫喝に来る老人たちを一人ひとり丁寧に説得していきました。なんかやたら高圧的な人ばかりでしたが、政治的なスローガンが曖昧だし、烏合の衆感があったんですよね。だからこの人達はなんとなく流されてイジメとかに参加してる子どもと同じで、一人ひとり説得していけば切り崩せるぞと思えたのです。

「ヌシが公園を私物化するために子どもたちを追い出そうとしてて、僕は子どもたちの利益を代弁しているだけです。そうでなくても公園の私物化は日本の法律では犯罪なんですが…」と、来る人来る人、丁寧に説明しました。そうすることで、大抵の人は戦線を離脱していきました。どうやら長年の仲間であるヌシが悪い人のはずがないっていう思い込みで馳せ参じていたり、同調圧力に屈しただけだったり、ほとんどの人は、思ったより害のない感じ。

ところが町内会長さんとか町内会の活動に熱心な人になるとわけが違うかんじでした。詳しく説明しても、「なんでこいつは我々の言うことを聞かないんだ」といういらだちを隠さず、話を遮断して罵詈雑言を投げかけてくる。ときには、我々には警察にコネがあるぞ、お前のことも相談してるぞ、とか脅されたりしました。ちょっと、普通の日本人からは想像できないカルトちっくな世界観ですが、まあここは大阪のど真ん中なので、警察も正常に機能しています。「駐在が村民と一緒になって村の風習を暴こうとする記者の失踪事件を隠蔽する」…とか、そういうイベントは発生しませんでした。適当なことを口で言ってるだけです。(もちろん、それは脅迫罪ですが…)

とりあえず頑固な幹部の人は置いといて、負けじと、僕に直接文句を言いに来る人以外にも働きかけるべく、何故揉めているのか、何が論点なのかをまとめて子どもたちに演説し、保護者に協力を要請するプリントを配ったりして、「ビー玉賛成派」の政治的な組織化を進めました。演説は即興で脚本を考えるのがとても楽しかったですね。自分たちが何に対して怒ればいいのか、わかりやすいストーリーを大衆に向かって説明しました。子どもたちは一丸となり、保護者の方からの応援の声も多数届き、組織化は大変うまくいきました。演説では「公園は子どもたちの物だ!ヌシの庭ではない!」などというスローガンも産まれ、市民運動みたいでしたね(笑)

こんな感じで騒ぎが拡大していけば、そもそもヌシのやってることは犯罪なので賛成派は増える一方だし、老人グループの動きも鈍るのでは?という目算。実際その通りになり、老人グループの組織的な嫌がらせは一時的に止みます。特に決定的だったのは、どうやらビー玉にハマっている孫がいる老人が内部にいたらしく、その人が取りなしてくれて収まったようでした。村社会ではメンバーの発言権が強く、部外者には人権がない。しかし彼らも、身内にたいしては思いやりのある行動をとるため、村人に賛成派が出てくれば、停止するわけです。レジスタンス作戦は大成功に終わりました。

子どもたちにイジメられるヌシを擁護する

と…ここで不測の事態が起こりました。

なんと子どもたちがヌシをバイキン扱いしはじめて、公園に来たら「悪い人がいる」って指差したりして、イジメみたいになってきたんです。僕をイジメにきた老人たちも子どもっぽかったですが、こっちの手勢も子どもなので、悪を成敗して嗜虐心を満たす行為の味を覚えてしまったのです。果ては、ヌシの家に殴り込むから住所と名前を教えてくれと鼻息を荒くする保護者からの反応までありました。圧政に対する抵抗組織を作ったら、今度はこちらの勢力が暴走しはじめた。これはまずい。

僕は関係者をなだめ、子どもたちに問題は解決したことと無益な争いはやめるべきであることを演説し、これ以上ヌシがいじめられることがないように取り計らい、騒ぎを沈静化させました。

これにて一件落着!

だったらよかったんですけどね。

ビー玉ウォーズ2019

嫌がらせ第一波の記憶も薄くなった2年目のことです。なんと、町内会役員の中でヌシによる根回しが進んだらしく、嫌がらせが再開しました。ヌシには、イジメられないで済むように取り計らってる事も説明してあったのに、あいつ…その恩を忘れたのか…ボケてるから忘れたんかもしれんな…。僕は仏様の教えとか孫氏の兵法に従って、できるだけ町内会やヌシ側に被害がでないように和平工作をしていましたが、その甘さが反撃の余地を与えてしまいました。マキャベリの戦争論では一回敵になった相手は念の為徹底的に殲滅せよと語られていますが…あれはあれで現実的なのかもしれません。

彼らは昼過ぎになると蛍光ピンクのコスチュームを着て防犯パトロール隊をやっているのですが、それが自転車で町中をぐるぐるしながらのパトロールなんですね。で、僕を見かけるとジロジロみてきたり、挨拶をしても無視したりといった、犯罪者扱いで「村八分」をアピールしてくるようになりました。要求も曖昧で、何も言ってこないぶん、今回は論破できない。これはたちが悪い。この人達は、問題を解決するのではなく、イジメをやることが目的なんですね。

まあでも気のせいかな、と思いつつ町内会長さんの家に行き、「なんか嫌がらせみたいな感じになってませんか?」と事情を聞いてみたところ、登下校の見守り活動に役員が数人集まっているところに連れて行かれて、寄ってたかってえらい罵倒されて、「ここ数年お前の話なんか”一切”したことない!」とまで言われましたので、やっぱりわざとだったのがわかる(笑)ここで政治家みたいに上手に否認や黙秘を決め込めたらいいのに、それがちゃんと出来ないのはやっぱり政治的な目的や計算があってやってるわけじゃなくて、集団の悪意をコントロールできない、自然発生的な子どものイジメと同じだってのがわかります。それでも、ダメ元で、こういうのイジメだからやめてもらえませんかって丁寧に頼んでみたんですが、バカにされるだけでした。

またやんのかよ~とか思いながら、対処法を考えます。こういうパトロール活動って自治体の要請とかでやってるんだし、自警団が暴走しないように見張ってる公安みたいなシステムがあるんじゃないか?って思って、通報先を探すレジスタンス活動第二弾をはじめました。

社会福祉協議会に相談する

で、手始めに相談にいったのが、社会福祉協議会です。2年目はビー玉ブームも一段落してプレイヤー人口が減って僕のカリスマ性が低下していたので、不審者ではないかと不安視する保護者の方とかいらっしゃいましたので、政治的な立場を補強するべく、ちゃんとしたボランティア活動家としての肩書を強化するために色々動いていたんですね。それで社会福祉協議会っていう周辺地域のボランティア活動一般を司る公の組織に個人ボランティア活動家として名前を登録し、職員の方に活動内容や本職が漫画家であることなどをしっかり説明して、後見人になってもらってるような状態になっていました。この時の職員さんはすぐ異動?されてしまったのですが、大変お世話になりました。

それで、職員さんにこれまでの経緯と状況を説明したところ、おそらく町内会の活動を制御してる地域活動協議会あたりに話が行って…町内会長さんたちはめっちゃ怒られたらしく、態度が急変しました。急にニコニコ作り笑いで手を振ってきたりするようになり(嫌味か?笑)結局、役員の仕事は手伝ってるみたいですが、町内会長を辞任したみたいです。この人はヌシ以上に挑発的だったんですが、ほんとに辞めるはめになるくらいの恥をかくとは心にも思ってなかったみたい。手始めのつもりが、これだけで取り返しのつかない不祥事になったようでした。

その他、なんか責任のなすりつけ合いが発生したらしくて、副会長さんみたいな人も辞めたらしいです。イジメを楽しみに集まってるような感じの人々なので、旗色が悪くなると仲間割れも早いです。

不思議だったのは、彼らは地域活動協議会から一定の教育を受けているらしく「命令ではない」とか頻繁に言い訳するんですが、要求に従わなければ嫌がらせをする…それは命令しているということです。教育担当者の役人さんが教えたことを分かった上で暴走しまくるのはモノの考え方とかどうなってるのか、マジで謎でした。予め禁止されていたことを大々的にやってたわけですから、怒られるわけですよね。それで、怒られたらショックを受けるってことは、役人さんを舐めているわけでもない…。でも言いつけは守れない…。

一番の元凶であるヌシにも責任転嫁の波は行ったはずだと思いますが、彼が老人グループでどんな扱いになったのかは、コロナによる自粛で互いの活動が強制終了したので、その後の経過はよくわかりません。ただ噂によると、ヌシは子どもたちにハブられたのがよほど堪えたらしく、子どもたちの機嫌を取るピエロ状態になったらしいです。登下校の見守り活動とかでめちゃくちゃおどけてみせたりするようになってて、2019年の世代の子とかはビー玉カルチャーを潰そうとしてたという伝説のヌシが、そのピエロと同一人物だという話をしたら驚いてました。まあ、子どもたちに対しては、ある意味で更生し、贖罪を続けていると言えるでしょう。というかヌシは子どもが嫌いだったわけではなく、純粋に花壇で人々を楽しませ、美しい花々を守りたかっただけなのかもしれないですね。来世は私有地でやろうな。

まとめ

老人グループの中でもイジメを主導していたのは権力志向の強い数人の男性たちで、女性のおばあちゃんとかはイヤイヤ付き合ってる感じでした。事件後、おばあちゃんたちはにこやかに挨拶をしてくれるようになり、平和が戻りました。パトロール活動は隣町の町内会と担当区域を入れ替えるという処置がなされた(あるいは自分たちで頼んだ?)らしく、僕が家の近くでパトロール隊と出くわすことは無くなりました。関係者からの僕に対する謝罪などは一切ありませんでしたので、ちゃんと反省はしてない気がしますが、だいぶ痛い目を見たと思うので、また何かやってくることはたぶんないと思います。

というわけで、相手の言い分もめちゃくちゃだったし、公的機関の手助けもありましたので、勇気さえ出せば意外と楽勝だったんですが…正当防衛とはいえ、他人を打ち倒すような事をするのは気が進まないことでした。度重なる嫌がらせにストレスを感じつつも、なかなか通報にまで及ばず、結局は我慢の限界に達して、やっと言いに行ったって感じです。相手が大怪我するってわかってたら、自分が殴られてても軽々しく引き金は引けないですよね。

このように謎のトラブルの話ということで、活動の本筋とは関係なくてなかなか書く気にならなかったのですが、こういうのもボランティア活動を語る上で避けては通れないテーマだと思います。完全非営利のマジメなボランティア活動でしたが、目立ってくれば色々と理不尽なトラブルに巻き込まれるため、ある種のイベンターやボランティア活動家には、楽しいことをクリエイトするだけはなく、楽しさを守れるしたたかさ、不当な要求には屈しない姿勢が必要になりますねー。色々と大変でしたが、自分が何も悪いことをしていないのであれば怖がらなくても大丈夫です。一個一個ロジックを組み立てて関係各所に働きかけたり個別の反論をしたりしていけば、まあどうにかなるっぽい。これに比べると漫画家などは描くだけなので楽な商売です。漫画家は、昔は焚書なんかもされてたくらいでしたが、偉大な先人たちが社会的な立場づくりをやってくれているわけですよね。新しいカルチャーを作る人は、社会的立場を作るとこからやらなきゃいけない。昔の人に感謝しなくてはなりませんな~。

個人的には、子どもたちが後ろに居たことで逃げるわけにもいかず、強制的に決着まで戦い抜いた事はいい人生経験になりました。公園に居たのが僕だけだったら、めんどくさそうって打算して絶対逃げてたなぁ。

以上、ビー玉ウォーズでした。ここまで読んで頂いてありがとうございます。

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください