漫画講師をやってみた話

こんにちは、しゃど地蔵です。僕は2024年の春からKADOKAWAマンガアカデミーの大阪校で「漫画ストーリー」の講師をやっています。今日はその件について記事を書いてみようかと思います。

このお話を頂いたのは2023年の末でした。カドデミー(僕の考えた略語)が出来ることになって講師を探していた運営会社の人が、Xで「大阪在住漫画家」である僕を見つけ、趣味でブログに書いてた漫画論をみてお声掛けしてくれたのです。一体何が新しいお仕事につながるかわからないものですな。

でも、その頃は週刊少年ジャンプで連載目指すぞ!!!と覚悟を決めて燃え上がっていたタイミング。漫画に全コミットするつもりで講師やる気はほとんど無かったんですよね。ところがですね、やっぱり漫画論とか考えるの好きなんで、どういう授業をやろうかなぁとかぼんやり考えていたら試してみたくなった。それに、もし漫画家として売れたら講師業なんか一生やらんのでは?今しかできない貴重な人生経験では?と思うようになり、この仕事を請け負うことにしました。

あくまで漫画が大事ですので、シフト(?)は最大限減らしてもらって、週イチ3コマ(3時間)、休みの週とかもあるんで、月に平均3日くらいだけです。この程度でも生活の基本がヒキコモリである自分がやったらノイローゼになるんじゃないかと不安だったんですが、やってみると意外と出来ました。連載をしてるわけじゃないのでネームを送った後の担当さんの返事待ちで暇な時期というのは結構ありますし、隙間時間に授業の準備とかやってれば、良い気晴らしになってかえって元気になる。家で黙々と漫画ばかり描いてると、病んできますからね。

専門学校あるあるというやつで、カリキュラムは講師の自作なんですよね。教える内容は、全部講師にお任せです。漫画の学校に行ったこともない、売れない漫画家の僕に漫画講師なんかできるのか?って不安でしたが、やってみたら自分の勉強になるしクリエイティブ体験としてめちゃくちゃ面白くて、しかも上手にできたんですよね。講師をやるということは、漫画と同じなんですよ。漫画を描くという時点で「情報をわかりやすく伝える」という作業をずっとやってきている。それを壇上で芝居するように実演するだけでよかったです。

まだ作品がヒットしてないんだけど…っていう負い目もあるんですけど、ピアノ講師はプロのピアニストではないわけじゃないですか。初心者に教えるなら高度すぎるプロの技術は宝の持ち腐れです。むしろ必要なのは、生徒の理解度や興味に対する想像力です。だから、その点は問題なし。まあでもやっぱり一応プロのほうが授業に説得力でますし、本当はよくわかっていない事を教えてたら本気でプロを目指す子に対して知ったかぶりになります。おしゃべり好きでプロ漫画家だけど、連載してなくてヒマな僕みたいなのは漫画講師に適任だったのだなと思います。

ちなみに受け持つクラスは高等部なので、生徒さんはみんなKADOKAWAドワンゴ系列のS高という通信制高校に通う高校生です。僕は子どもの面倒をみるのが好きなのでそれも楽しい。1時間目に漫画論を噛み砕いて教え、2時間目に課題をやって、3時間目にみんなで楽しく笑いながら講評をやるだけです。まーこれが、ももにい(ビー玉遊び)を思い出しますねぇ。向いてるような気はしてたけど、めちゃくちゃ楽しいっすわ。ビー玉ボランティアと違って変なモンスターペアレントはこないし、金もらえるし。えらそーなことを言ってても素直に僕を尊敬してくれる漫画キッズたちに囲まれて幸せですよ。ここ数年、話し相手といえばコンカフェ嬢とマルチ商法の勧誘しかいなかったですからね。(←ちょっと大袈裟に言っていますが)

僕はね、孤独で可哀想なやつなんですよ。
今から詳しく説明しますので、どうか憐れんでください。

別にコミュ障ってわけじゃないし、常識あるし気が利くので(自分で言うか?)友達作るのは得意です。でも職業柄(?)維持するのが難しいですね。漫画家ってキラキラして見えるらしくて、僕みたいな雑魚でも妬まれます。漫画家になったことであるリア友は嫉妬で気が狂ってしまったので縁を切りました。大阪のクリエイター飲み会というのも参加してましたが、ヤンジャンだとか少年ジャンプだとか言ってるのは僕だけなんで、メジャーコンプレックス抱えてる人が発狂して襲いかかってくるのが恐ろしくて顔出せないですね。バーとか行って名無しさんとして世間話をしているうちはいいですが、仕事を聞かれて漫画家だって答えたら、バーテンダーの気が狂うこともあります。アマチュアが集まるイラストオフ会にも参加しましたが以下略。人間は嫉妬すると、対象が不快になり一挙一動が悪いことしてるように見えるらしいです。本当に些細なことで怒られるから恐ろしいですよ。

僕なんかマンガ業界でろくな目にあってないんですけど。有り難いことに編集者さんに相手はしてもらってますが、ぜんぜん売れてないし。それでも必死で努力している可哀想なやつなんですけどね。世の中には漫画家コンプレックスの人ってのがいて、こんなんでもひどい嫉妬の対象になるんです。

人に差があるのは当然ですが、「顔面コンプレックス」とか「学歴コンプレックス」とか「年収コンプレックス」とかだったら一般論や自らの失敗に学ぶ機会があるんでしょうが、漫画家っていないじゃないですか。彼らも悪い人じゃないんでしょうけど、たいてい初体験なわけですよ、漫画家への嫉妬。そんな感情は存在しない前提で動いてるんで、彼らは素直に僕のことを「悪」であると識別します。やってることは友達の玩具が羨ましくて癇癪を起こす4歳児みたいなものなんですけど、そうと思わず劣等感をこじらせ放題でいい大人が次々に襲いかかってくるわけです。世の中の全員じゃないですが、5人に1人とかの割合でそういう人は実際おるんで、友達グループに入って平和に暮らすのはなかなか難しいです。仕事の愚痴も自虐風自慢みたいに捉えられますし、漫画の話を一個やるだけでもプロ目線での批評なんてうっかりやろうものなら劣等感を与えてしまいますので、素人に対してマウント取るみたいな形にならないように気を遣ってて、思考回路のブレーキベタ踏みです。

売れたら売れたで成功者だからまだいいですよね。人間は同じステイタスの人間とつるみます。仲間の売れっ子漫画家さんとつるめるならマシになるんじゃないかと思ってるんですが、僕はね、売れてないんですよ!僕のような売れない漫画家は一般人からみたら「漫画家」で羨ましい存在かもですが売れっ子からみたら「自称漫画家」の変なやつです。それに「漫画家志望」でもない。僕は受賞もしてない中途採用だからジャンプ漫画家志望の若い子ともつるめず、マイナー路線で割り切ってる職業漫画家グループからみたら「ジャンプ漫画家予備軍」なのでそれともつるめず。牢屋みてーなステイタスなんですよ。

という感じで孤独な限界漫画家生活が続く中…授業ではアクセル全開で自分の能力を発揮してみんなを楽しませても、ただ喜ばれるのみ。子どもたちは僕を尊敬してくれてて、ほんと嬉しいです。

なお、生徒さん以外でもこんな僕と仲良くしていただいている人たちはいますので、とても感謝しています。ネットで繋がってる遠方の人が多く、リアルで会えないですけどね。

あとは、何年もボツネームを描いてきて鬱だったところ、わかりやすい成果がでて、自分は優秀なんだなあと確認できたことが自信に繋がりました。将来的な仕事を見込んだセールスなんで、自分でいいますけど。生徒さんたちの評判もいいし、たぶん僕の漫画講座のクオリティはトップクラスです。技術的には一応メジャーレベルだし、プロの技術を押し付けるのではなく、わかりやすさを重視してます。同時に優秀な生徒を退屈させず才能が伸びるように色々と工夫もしてます。そして何より、しゃど地蔵は先生役をやらせると、話が面白いんですよ。アドリブが上手いんです。

本当は開発したカリキュラムをコピーして、一日6時間勤務、週5くらいで回すべきなんでしょうね。そのペースで働く形で計算してみたら年収が5~600万くらいにはなりそうでした。わー、普通にちゃんとした社会人や。自分のこと、漫画売れなかったら一生ただの無職やと思ってた。やればできるじゃん。家でスライド作って、楽しく漫画の話をして、生徒に軽くアドバイスして講評で読み上げるだけ。だけって言うほど簡単じゃないけど、僕はそれが得意みたいだ。普段から趣味でやってるような事をやるだけでこんだけ稼げるなんてすごいな。仮に漫画で売れなくても一生安泰なんだなと思うと気持ちが楽になりました。もちろん、それは保険であって、本業は漫画家ですけどね。講師をやってみることには、そういう精神面を安定させる効果もあり、本業である漫画を制作するモチベーションが上がりました。


というわけでしゃど地蔵は今、KADOKAWAマンガアカデミーさんで漫画の講師をやっています。授業を請け負うかどうかのスケジュールは半年ごと自由に決められるんで、連載で忙しくなったらやめるかもしれないけど、週イチくらいだったらこれからも続けたいような気がしてます。なお、KADOKAWAマンガアカデミーさんでは講師の指名はできませんので、もしこれを読んでて僕個人に直接指導を受けたい人とかいたら、XのDMやメールなどでご連絡ください。単発の仕事としてお見積りします。

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