こんにちは、しゃど地蔵です。今日も元気に漫画について考えます。
メジャーとマイナー
まず、この記事で語る2つの言葉を定義させてください。
「メジャー」と「マイナー」、2つのストーリータイプです。メジャーは少年ジャンプとか、一般人も読むような普通の漫画です。マイナーは若干オタク向けで月刊誌とかWEB媒体とかの漫画に多いやつ。売れてるマイナーもあれば売れてないメジャーもあります。これはストーリーの類型をカテゴライズするための用語であり、作品としての優劣を示すものではありません。
メジャータイプとは?
一言でいうと、ストーリーに「ドラマ」があるタイプ。
ドラマって困難を乗り越えるから面白いわけです。主人公がめちゃくちゃ困難な障害を努力の末に乗り越える感動の物語、それがメジャータイプです。ジャンプ、サンデー、マガジンなどのほとんど全部のストーリー漫画はこのタイプです。
様々な困難を乗り越えることで主人公の魅力は多段ロケットのように加速していき、長期連載の大ヒット作ともなると、クライマックスで光の速度を超えるようなイメージ。
メジャーは難易度が高い。主人公(読者)に苦労を強いる分、クリア時の報酬は相当なものを用意しなければひんしゅくを買います。そのためには高い作劇能力が求められる。
既存の作品と差別化するニッチ戦略的な観点からみても、マイナーで武器となる奇抜な設定は「普通に面白いドラマ」を書く上ではむしろ邪魔なので、メジャーにおける筋書きは正攻法で書かれた似たようなものとなり、過去のヒット作と力比べになる。
高い。難易度が高い。
マイナータイプとは?
このタイプの作品には、ちょっと乱暴な言い方ですが「ドラマ」がありません。メジャー誌の作品でもギャグ漫画などはこちらに入るのかも。ツイッター漫画もここ。
マイナータイプは、メジャーより純粋な娯楽作品といえるかも。主人公は最初から最強だったり、打倒したい敵がいない、乗り越えたい困難がない、目標がないなど、苦しまないのを特徴としていますね。読者をひたすら甘やかし、気持ちよくなってもらうのが大事だと思います。
マイナータイプでもヘルシングとかなろう系作品とか、売れてる面白い作品はいっぱいあります。最初の設定の面白さをカタパルトみたいにしてバーン!と打ち出して、主人公が苦戦することは無いことからドラマがないので加速はしにくいんですが、困難がないおかげで空気抵抗が0なので、読者はストレスを感じない。ずっと滑空し続けるような印象があります。だからワンピースみたいに1億部とか売れるマイナー作品はありませんが、数百万部くらいまでなら行けるし、10万部くらいなら下手なメジャー作品より安定して量産されています。
おそらくマイナーはドラマがないという特性上、ストーリーで特色を出すものではなく、勝負所は「絵」と「設定」になるんだと思います。新しいニッチに食い込む設定を上手い絵で描けば、例えば中途半端な鬼滅の刃の劣化版メジャー作品で正面から勝負するよりも売れるし、作家として必要な才能は「絵が上手い」「コマ割りが上手い」に限定されるわけで、既存のヒット作と対抗できるレベルの作劇が求められるメジャーと比べたら書ける作家の母数も増えるわけです。
なぜオタク向けの作品がマイナー路線が多いのかという謎がありますが、おそらくオタクはストーリーに対して見る目が厳しいので、中途半端なメジャー作品よりドラマを放棄したマイナー作品のほうが読んでて安心するから、とか。あるいは、そもそも耽美な空想の世界に現実逃避する姿勢こそがオタクっぽさだから…とかではないでしょうか。
メジャーは話、マイナーは絵
以上のことから、昔からよく言われている「メジャーは話、マイナーは絵」という感じになるわけですね。漫画家はこの2つを区別して考えないと迷走するかもしれません。漫画家さん/志望者さんは自分の作風がメジャー路線なのかマイナー路線なのか、よく考えてストーリー展開を選び、ひいては媒体を選ぶとよいのではないでしょうか?昔ぼくは某マイナー誌の出張編集部に持ち込みしたら汚い太ったおじさん(私怨)にめちゃくちゃ雑魚扱いされましたが、ヤングジャンプでは将来性を見込まれて人権があったりなどの待遇の差がすごかったです。媒体によって市場価値が異なるんですね。
個人的な話になりますが、最近、自分はどうしても真面目にドラマを考えてしまうし、考えるならマジで既存の大ヒット作品を上回るくらいのドラマ性を考えねば勝負にならんという事に気づき始めました。大変だけどがんばります。