恐怖のマルチ商法シェアハウス

大阪市内某所には住民全員がマルチ商法をやっているシェアハウスがある。そこに住む人は、某マルチ商法の信者にされてしまうのだ。

先日僕は、そのシェアハウスでの「食事会」に招かれ、某社製品の素晴らしさについてあれこれ実演され、マルチ商法の勧誘を受けるという体験をした。なぜか照明が半分ほどしか灯っていない薄暗いマンションのリビングルームで、3人に囲まれながらの勧誘を受けた。

知らない人のために説明すると、こういう「不意打ち」は特定商取引法(第33条の2)で禁止されている違法行為である。騙されて連れてこられて、断れない雰囲気があり、怖かった。そりゃ犯罪になるだろうな、と思った。

信頼していた友人に裏切られた事も精神的に苦痛だったが、さらなる恐怖を感じる理由が別にあった。気持ちの整理と注意喚起を兼ねてこの記事を執筆させていただく。

何が怖かったのか。マルチ商法というと「営利目的」の詐欺みたいなイメージが強いが、そっちの方がまだマシだ。僕が目撃したのは一種の「カルト宗教」の洗脳を受けた人々だったように思える。商品を紹介するという行為を一種の神聖な儀式のように扱う彼らは「善意」でマルチ商法を広めようとしている、というのが伝わってきた。「大切な友人に、素晴らしい物を紹介している」彼らはそう述べて、商品の説明を続ける。その言葉にウソはない。

しかし…どれだけ美しい言葉で誤魔化しても、彼らが売っている「素晴らしい物」の販売価格は、同等性能を持つ市販品の3~5倍というボッタクリ価格だ。月々1万円で万病を防ぐ謎のサプリメントだとか、一揃い20万円もする鍋、浄水器など買わされてたまるものか。こんなのは、騙されて高額な商品を購入させられる「負け組」に損をさせることで利益を吸い上げているにすぎない。もちろん市場競争力なんかなくて、一般消費者は買わないので、実際の購入者は「友人」の頼みを断れない気の弱い人や、認知能力に障害がある社会的弱者。あるいは、マルチ商法に心酔する末端信者たち自身である。

販売員が商品を仕入れすぎて破産する話は有名だが、それでなくとも、「売るために自分でまず使う」ことが求められるので底辺信者たちは「投資」だと錯覚しながら高額な商品を買わされるのだ。

マルチ商法はネズミ講と似たピラミッド型の組織構造上、販売員の99%は時間と金を搾取されて終わる運命にあるが、「誰でも儲かる」「夢が叶う」「成長できる」などのキラキラした誘い文句で連れていかれる洗脳セミナーでは、巨万の富を得た「成功者」というのが出てきてお祭り騒ぎで表彰される。「次はあなたたちの番です!」司会者は叫び、信者たちは熱狂する。このある種のトランス状態に煽られて、荒唐無稽な儲け話の「夢物語」を信じてしまう人が結構いるらしい。

「お金」を神として崇拝する、資本主義社会におけるカルト宗教。それがマルチ商法なのだと思った。お金は人類を救済する事もあるが、このカルトに参加していても、救済などされない。金なんか手に入らない。友人も失う。もちろん、マルチ商法で経済的に成功する人間は、ごく少数ながら存在する。しかしその立場になれるのは、洗脳をする側の人間だけ。販売組織の頂点に君臨し、他人を騙して利用することを厭わない悪人だけだ。マルチ商法は、彼らが詐欺罪で捕まらないために鍛え上げてきた武器なのだ。洗脳された人間が喜んで金を落としている、勝手に押し売りをしている、「それだけ」の話だから、裏で操っている「成功者」は裁判で有罪にならない。

そしてそのためのシェアハウス。カルト宗教は「出家」させることで信者を社会から隔離、繰り返し教義を刷り込むことでマインドコントロールする。あの場所は、そのための洗脳施設なのだ。狭いマンションの一室で信者たちと共同生活をしながら正気を保ち続けるのは、かなり難しいのでは?

幸いにも客人にすぎなかった僕は勧誘を断った。カルト宗教の聖域で授けられる「祝福」を拒絶した。

すると何が起こったのか、正直に話そう。僕を誘った「友人」の彼は、マルチ商法の「素晴らしさ」をわかってくれない僕を前にして、激怒するでもなく、なんと、号泣した。あんなに本気で泣く成人男性を僕は生まれて初めて、この目でみた。

彼は、粗野なところはある男だったが、元々悪人ではなかった。ただ、洗脳を受けて「間違っているのは社会のほうだ」と、人としてのモラルはすっかり書き換えられていた。「犯行動機」は、まったくの善意、そして「マルチ商法で成功したい」というピュアな情熱なのだ。

せっかく泣いてもらって申し訳ないのだが…僕が最も大きな恐怖心を感じたのは、この瞬間だ。やっていることはただの犯罪。それなのに「善意」で他人を生贄に捧げようとするカルト信者の姿がそこにはあった。ここはやつらのアジトで、僕は薄暗い部屋の一番奥に座っていて、取り囲まれた状態だ。彼らに対する印象が急転直下していく中で、僕の目に映る「友人」の見え方が、おぞましい怪物へと変わっていく。相手がただの悪人であれば、どんなに気が楽だっただろうか。無邪気に距離を詰めてきて、ノーガードで0距離から放たれる、捨て身の一撃である。だからこそ彼は拒絶されたことで自分自身が一番傷ついて、信仰心と友情の板挟みになって、本物の涙を流しているんだ。

彼は…そのマルチ商法をやっていたら、「漫画家になれる」と本気で信じている漫画家志望だった。マルチ商法をやると漫画家になれるだって?聞いたこともない…意味不明だが、彼は真面目だった。マルチ商法をやれば、とにかく「夢が叶う」そのような洗脳を受けていたらしい。

漫画家になるためのアドバイスがほしい、と頼まれて、半年ほど、無償で面倒をみていた人でもあった。いつの日か彼がデビューでもしてくれたら嬉しいと思って、人助けのために時間を割いていた。彼もそのことに感謝し、僕を尊敬してくれていたようだった。

その恩義に対する「心からの御礼」がマルチ商法であった…。

漫画家志望というのは本当に精神的につらい立場である。作品を描くのはものすごいエネルギーを消耗する。漫画賞に受からないと、自分の魂まで否定されたような惨めな気持ちになる。たいていの漫画家志望は何年かすると漫画家になるか、諦めるか、少しずつ壊れていく。正気を保ったまま、何の成果も得られない努力を淡々と続けられる人は少ない。

地獄で彷徨う彼に救いの手を差し伸べたのが、マルチ商法シェアハウスだったのだろう。漫画に疲れ果てた彼は、あれこれ言い訳して、あまり作品を描いていないようだったが…そういう意味でも、マルチ商法は救いだったのである。マルチ商法さえやってれば、漫画を描かなくても、漫画家になれるというのだから。

後日、僕との関係性を続けたいならシェアハウスを出て足を洗うように説得を試みたが、まったく話が噛み合わずに絶交(マルチ商法シェアハウスの関係者、数名も含む)となった。手は尽くしたが、洗脳施設にいるカルト信者を、他人が外からどうこう言って助け出すのは無理である。

そのシェアハウスにはクリエイター志望の若者が集められており、マルチ商法をやりながら励まし合って、仲良く暮らしているようだ。みんな寂しくて、お金がなくて、夢を見ている若者たち。居場所も、お金も、夢も与えてくれる(ような気がする)マルチ商法の格好の餌食というわけだ。

彼らは決して悪人ではない。

悪人ではない人間が善意で悪事を行い、新たな犠牲者を連鎖的に増やしていくのがカルト宗教とマルチ商法の恐ろしさだ。「勧誘」で正体を表すまでは、社交的な善き友人だろう。信者は友人作りをするように指導されている。社交的になれば友人が増えるし、布教/勧誘する機会も増えるというわけだ。マルチ信者の笑顔に騙されるべからず。あなたや、あなたが所属する友達グループに侵入して、すっかり気を許した時、彼らはこう言うだろう。

「大切な友人に、素晴らしい物を紹介している」

彼らは創作系交流会などで知り合った人間をシェアハウスに招き、勧誘を繰り返しているらしかった。交流イベントなどではマルチ勧誘禁止と警告されるものが多いが、勧誘目的で友人を作りに来ている不審人物が紛れ込むケースは実際にたくさんあるのだ。

繰り返しになるが、目的と正体を隠して勧誘を行うことは、犯罪である。しかし、「友人と食事をしているときの偶発的な説明」「会社と関係なく販売員が勝手にやっている」などと言い訳ができてしまうので、長年、野放しになってきたようだ。これを消費者庁も問題視しており、2022年には逮捕者も出て、この会社は6ヶ月の取引停止処分になっている。だが停止処分が解除された直後にまたやっているあたり、彼らはまったく懲りていない。なにしろ善い事をしてるつもりなんだから、罪悪感なんてあるはずがない。

今回の件とは別組織ながら洗脳目的で運営されているシェアハウスが存在するとメディアでも指摘されている。
「月20万円でカビだらけのシェアハウス住まい」起業を夢みる若者を狙う洗脳の実態 上納金のために性風俗で働く女性も – プレジデントオンライン

最後に警告させてもらいたい。

親しげな顔で他人を家に誘う人間には気をつけろ。特にシェアハウスはヤバイ。そこは、カルト教団の洗脳施設かもしれない。

恐怖のマルチ商法シェアハウスは
日本中、どこの都市にも存在しているし、
不景気や社会不安に乗じて増殖を続けるだろう。

読者の皆様はくれぐれも自己防衛されたし。

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