「◯◯アルヨ」って喋る中国人キャラの話

「◯◯アルヨ」みたいな喋り方する中国人というストックキャラクターが日本の漫画には存在してるが、それについて考えたこと。このユーモラスなキャラクターが生まれたのは冷戦時代で、竹のカーテンの向こう側で謎に包まれた中国人は貧しいけど素朴な人たちで自転車漕いでて~みたいな漠然としたイメージがまずあって

さらに日本人には戦争の負い目があって、東西冷戦の敵国でもあるが、戦後民主主義的な、アジアのみんなと仲良くできたらいいねみたいな幻想と、発展途上国の人はやっぱり怖いという差別感情とか、当時の日本人が抱いていた色んな感情を交えて生まれたのが「〇〇アルヨ」で、中国拳法ブームと組み合わせたこの手の中華観はらんま1/2やドラゴンボール、90年代あたり黄金時代を迎えた。

これはマジカルニグロに近い。アメリカでは犯罪者予備軍として恐れられた黒人マイノリティに対する白人の差別感情と罪悪感から、「実は怖くないよ、イイヤツだよ」っていう感じでそれを打ち消すおもしろ黒人というキャラクターイメージができた。例えばエディ・マーフィ主演のコメディ映画などがその典型だ。「◯◯アルヨ」はこれと似ている。

マジカルニグロは今どうか?消えた。今やったらポリコレ違反だって叩かれる。仕方ない時代の変化だ。ユーモアとは、不謹慎と、常識と、いじわると優しさと…色んな感情のせめぎ合ったギリギリの綱渡りであり、一歩間違えれば滑るのは仕方ない。とにかくマジカルニグロで笑って楽しめていた観客は、もう居ない。

日本の漫画にポリコレは無いが、時代は変化している。現実の中国が台頭して一部の富裕層は日本人より裕福になって、インターネットで内情もわかる。台湾海峡では軍事的緊張も高まっている。昔と同じように中国人で笑える?

上海の夜景

僕は正直「◯◯アルヨ」は時代遅れのキャラクターになってしまっていると思う。少なくとも90年代のような輝きはない。それでも、新人読み切りなんかを見ていると、かつての名作を模倣した「◯◯アルヨ」の拳法コメディが載ってたりする。昔の名作でみたようなキャラクターは描きやすいので描きたい人は多いと思う。でも、読み切りくらいなら許されるけど、連載はあまりみかけない。時代遅れの「◯◯アルヨ」はかなり弱って、死にかけているので、連載作品になれるだけのパワーはない。

「◯◯アルヨ」は面白いイメージだけが残っているが、時代が変化しているから、昔のようには面白くないんだ。これから描きたい人には水をさしてスマン。でも、昔の作品で面白かったからって、新しく描いても面白くならない設定も中にはアルヨ。

念のため予防線を貼っておくと、かつての「おもしろ黒人」的なメカニズムで面白かった「◯◯アルヨ」はほとんど死んだが、違うメカニズムでこの手のキャラクターが復活する可能性はある。例えば、中国に憧れてる日本人の女の子が口調だけ真似してるとかね。時代遅れになってしまったモチーフを別角度で見せる方法はある。その点に関しては将来の発明に期待するところだ。

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